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新世界
一昨日、京極夏彦『魍魎の箱』を読みながら、いつの間にか眠っていた。
京極シリーズは、簡単に言うと、陰陽師探偵が出てくる和風ミステリー。長いけどハマル。
深夜に彼女からのメールで目を覚ます。向こうで「地震」があったっち。
脳は寝てる間に、情報や記憶を整理するらしいよ。
そんなこんなで、見た夢が↓
ダークサイド出てるなぁ。


気が付くと私は体育館にいた。
大人、子ども、老人、男女。ヒトで埋めつくされている。
ヒトはみんな怯えている。私は何も分からなかったが、ノアの箱船を思い浮かべた。

みんなは家族や恋人、友達と肩を寄せ合い、話している。
私は一人だった。それらを探す気もおきなかった。神も仏も関係なかった。

みんなの怖れが体育館に充満したせいか、それとも突然か。
体育館が揺れた。

地震だ。
激しい横揺れ。
悲鳴より早く、男が叫ぶ。
「伏せろ!」
真っ白になった頭の中に、その言葉が飛び込んだ。
それに従ったのか、揺れに耐えられなかったのか、みんなは崩れるように床にしがみついた。
混乱する群衆を動かすには、論理より声のでかさとタイミングだと知った。

私はどうにか立っていた。他に立っている者はいない。みんなは頭を抱え叫んでいる。
馬鹿だな。
あちこちで家族、恋人の名を呼ぶ声。
私はその名前に漢字を当てはめながら、天井を見つめる。
小学校の避難訓練を思い出す。地震の時は机の下に隠れなさいと教わった。が、ここに机はない。
上から物が落ちてきたらどうするのか。これだけ人がいたら、逃げようもない。

電球が揺れている。鉄骨の梁が軋んでいる。
3秒。
…落ちる。
判断と同時に壁を見る。
50メートル…9秒。
右足で踏み切る。
左足で男の背中を踏み込む。
繰り返す。
体勢を崩しながらも前に。目で背中を辿る…女・子供は外す。あと18人。
手でバランスをとる。足で踏む。心臓でカウントする。72、73、74。

蹴りたい背中、障害物走、おはし。単語がフラッシュバックする。
押さない、走らない、喋らないどころではない。人の上を走っている。悲鳴が声援か。少し笑った。

壁に手を着く。天を仰いでゴール。揺れは続いている。来る。
引き戸の扉を見る。右に2メートル。三段飛び。

一歩。
何番目かの背中が天井を見上げて細くこぼした、「落ちる…」。

二歩。
波紋は一瞬にして広がった。みんな顔を上げる。声をのむ。静寂。

三歩。
終わりを認めた悲鳴は溜め息に近かった。空気が固まる。

扉に手を掛ける、開かない。
見上げる、来た。
扉の上には、小さい出っ張りがある。
息を止める。
扉に掌を付けぴたりと張り付く。

背後に重力の気流。
地震とは違う衝撃。
筋肉が収縮する。汗が引く。
電球の割れる音。鉄がぶつかり合う音。想像通りの音が響く。
ただ、人が潰れる音、うめき声は聞こえなかった。

目を閉じ、息を止めても、耳は塞げない。その音を受け入れる。
命掛けの雨宿り。雷雨の過ぎ去るのを待つしかない。

待った。

音と衝撃が止んだ。
地震のことは忘れていた。
首だけ後ろに伸ばし、天井を見上げる。固まった筋肉を徐々に伸ばす 。
電球も鉄骨もない、平だった。
一部天井が崩れ落ちた所から、光が射していた。青。
目線はそのまま、扉を伝って体の向きを変える。

薄暗い。
埃の匂いがする。
ああ、想像通りだ。
埃で霞む鉄骨の間から、人の手足が見える。
白と灰色。赤がないのが不思議だった。

ああ、生き残った。
私だけだ。
「女が…要るな」
自然と口から漏れた。
しかし、ここの外にも生きたヒトはいないと直感していた。
一人だけの新世界で何ができるだろうか。
何でもできる。
人類の復興なんて無理だ。野垂れ死ぬまで、好きにやろう。
床にへたりこんで、埃が舞うのを眺める。
孤独よりも清々しい希望で満ちていた。

…虚ろな視線の先に何かが動いた。あっちでこっちでも。
みんなが…鉄骨を押し退けて出てきた。まるで段ボールを払うかのように。
音はしなかった。いや、聞こえなかった。

生きてた…。
私はがっかりした。

埃にまみれ薄汚れた顔でみんな微笑んでいる…。血も怪我も…ない。

何人かが私の方へ歩いてくる。歩き方が変だ。

向かってくる微笑みに応えるように、私も微笑んだ。顔が引きつっている。

ああ、一人じゃ生きれないもんな。みんなが生きていて良かった。心でなく頭で言った。

ああ、でも私は一人だ。
家族も知り合いもいない。
いや、みんなを足蹴にして、自分だけ助かろうとした。一人だけの新世界を楽しみにしていた。
この先うまくやれない。
いや違う。みんなは、彼等は何か違う。彼等と私は違うヒトみたいだ…。

ゆらゆらと揺れながら彼が私に手を差し出す。

彼の手を握って起き上がる。
彼の手は想像以上に冷たかった。

ああ、やはり私は一人だ。
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2006-05-22 01:32 | +2愛 | Comment(0) | Trackback(0)
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